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おぉ、という野太い声で構成されたどよめきを一切無視して、アルはバルアに水袋を押し付ける。
呆気に取られたバルアは無言でそれを受け取る。


「アルヴィは無駄に気前が良いんだから!」


頬を膨らませ、怒るサザにアルは渋面を向けた。
事の大きさがちっとも解っていない。
今や水一つで人を殺すのだ。
サザに氷室を管理させたのが間違いだったのだ。
アルはバルアに向き直る。
バルアは片眉を器用に吊り上げ首を傾げた。


「バルア。あんたに頼みがある。」


「アルが俺に頼み事か?明日は槍が降るか」


じろり、と睨みアルは口を開く。


「この馬鹿に任せたら孤児達が干からびるからな。」


「?干からびるって、大事だな」


まさしく大事なのだ。
サザは自分の欲望に忠実すぎる所があった。
自分の言うことを聞かない奴には徹底して嫌がらせをしてきた。

孤児院でのあだ名は

『暴君サザ』

これほど素晴らしく、ぴったりなあだ名はないだろう。


「せっかくここを出る時に作った氷室をたった3年でサザは台なしにしたんだ。」


氷室、と言う単語にバルアは眼を光らせた。
アルはバルアが食いついた事に内心ほくそ笑み、言葉を続けた。


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